「社団戦レポート」 (7) | 月下の調べ♪のステージ

「社団戦レポート」 (7)

7/24(日) 曇

「やっべ~え」

無意識の中で携帯のアラームを止めてしまったことの重大さに夢の束縛から逃れた理性が気がついたときには、15分わざと進めてあるアナログの針が8:20を過ぎようとしていた。6:00まで眠れなかったとき、そのまま会場に行ってから仮眠すればよかったと後悔しつつ支度を進め、駅に着いたのは8:30。会場まではまだこれから1時間以上かかる。江戸川さんの留守電に到着予定を吹き込んで、調度やってきた快速に乗り込み、再度の仮眠モードに入った。

いつもなら試合開始の10:00に間に合えばよいのだが、今日は我らが「友遊クラブ」チームが会場準備と後片付けの当番になっていて、9:15に集合だったのだが大きく遅刻してしまうことになった。持ち回りでやることになっているこのシステムは、将棋の世界の住人たちの「自治」のシステムとも言える。これをやることで少しでも安く、そして身近に将棋に取り組むことができるのだ。

今日だけは、絶対に遅刻してはいけない。その気構えを裏切ってしまった情けなさを抱えたまま、浜松町を小走りに歩いた。道中の見覚えのある、待ち合わせの選手たちと思われる多数の顔を振り切るように通り過ごした。

会場に到着すると、もう会場の準備はすっかり終わって、見渡すとすぐチームのメンバーが見つかった。ごめんなさい、と開口一番いうつもりだったが、それが果たされたかどうかわからないまま、をいらの意識がみんなの笑顔と視線の先に吸い込まれる。

タカシゲくんが練習将棋をしていて、相手は、あっ!ゆーだいくん!本当に来てくれたんだっ! 

ゆーだいくんは北海道の中学三年生で、地元では大学生を交えた学生大会での優勝経験もあるほどの、超中学生級の強豪だ。どちらかというと将棋に対してほんわかムードの友遊クラブにとってはもったいないくらいの貴重な存在で、大きな将来性という楽しみを秘めた宝でもある。この大会には前日の飛行機の旅と宿泊という、一般には中学生には任せきれない旅程を独りで経て、はるばるやって来てくれたのだ。

「今日の大将は決まりだね!」

がぜん、成績のほうも期待が高まってくる。

と、もう一人見慣れない顔があった。ももた(大阪 30代)さん!なんと北海道までの長い長い列車独り旅の途中なのだという。ようこそいらっしゃい!と話してみると、チャットで話しているときよりも一段と独特の大阪ノリ♪で、ナチュラルなボケと軽いツッコミが会話に混じる。

そうこうしていると、もう試合開始の時間、6番のピブス(大会のユニフォームのようなもの)を着ようとすると、7番を着ていたももたさんと入れ替わるようふちゅうさんから指示があった。